最初の試み：19世紀と蒸気航行の先駆者たち
ドイツとイギリスを定期フェリーで結ぶ最初の試みは、早くも19世紀に行われました。最初の公式フェリー航路は、1841年8月28日にハンザ同盟汽船会社によって開設され、同社の汽船ハンブルク号をハンブルク-ハル航路に就航させました。この航路は、当時の新興経済国であった2国間の定期航路の始まりとなった。
ブレーメンが登場したのもほぼ同時期である。早くも1843年、ブレーメンの商人エドゥアルド・イションがブレーメンとアムステルダムを結ぶフェリーを設立した。数年後の1845年には、ブレーメンとハルを結ぶ定期航路が蒸気船ホルサとヘンギストによって開設された。
北ドイツ・ロイド：成功の時代の始まり
ドイツとイギリスを結ぶ定期フェリー航路の確立という初期の失敗にもかかわらず、後の海運会社に は道が開かれました。最終的に突破口を開いた最も重要な海運会社のひとつが、1857年にブレーメンで設立された北ドイツロイドである。
最初の船のひとつが「アドラー号」で、1857年10月28日にノルデンハムからロンドンへの処女航海を行った。アドラー号は、ヴェーザー地方とイギリスを結ぶ定期旅客サービスを開始した最初の北ドイツ・ロイド外航船であった。これに続いて、メーヴェ号、ファルケ号、コンドル号、シュヴァルベ号、シュヴァン号などの蒸気船が就航した。
北ドイツ・ロイドのイングランド航路は1880年代まで成功を収めた。この蒸気船は、ブレーメン、ノルデンハム、ハル、ロンドンの港の間で、2クラスの旅客と物資を定期的に輸送した。乗客数が増加した主な理由は、アメリカへの移民が増加し、多くの移民がイギリス経由でアメリカに渡ったためであった。
アルゴ海運会社と高まる競争圧力
北ドイツ・ロイドのイングランド航路は、1897年、同じくブレーメンに本拠を置くアルゴ海運会社に引き継がれた。アルゴ海運会社はより近代的な船を選び、航路網を拡大し続けた。ブレーメンとハル、ブレーメンとロンドンを結ぶ航路に加え、スコットランド、特にリース／エディンバラへの航路も開設された。
アルバトロス号、ファルケ号、レイハー号、アドラー号、シュヴァン号などのアルゴ・リーデライの蒸気船は、貨物と旅客の両方を運ぶことができた。しかし、海運会社間の競争が激化したため、1925年にノルトドイッチャーロイドがアルゴ海運会社を買収し、イングランド航路をヨーロッパの定期船ネットワークに統合した。
戦間期と競争の激化
戦間期は海運会社間の激しい競争が特徴的であった。1930年代には、経済的困難から海運会社は航路の再編成を余儀なくされた。それにもかかわらず、ドイツ・イギリス間の航路は存続し、ローランド・ラインと北ドイツ・ロイドの船舶が重要な役割を果たし続けた。
フェリー航路の歴史における重要なマイルストーンは、主に車両や物資の輸送を目的としたロールオン・ロールオフ輸送の導入であった。1963年以降、アルゴ海運会社はドイツ・イギリス間に近代的なRORO船を配備し、貨物輸送を大幅に簡素化・迅速化した。
旅客フェリーの導入：PRINS HAMLETと現代の時代
ドイツ・イギリス間のフェリーの歴史における新たな章は、1960年代に近代的な旅客フェリーが導入されたことから始まりました。1969年5月31日、フェリーのプリンツ・ハムレットがハンブルクからハーウィッチに向けて出港しました。デンマークの海運会社DFDSシーウェイズが運航するこのフェリーは、1,032人の乗客と315台の車両を収容し、ドイツ北部とイングランド南東部を直接結ぶ航路を提供しました。
プリンツ・ハムレットは、DFDSがドイツとイギリスを結ぶ複数のフェリーを運航していた、いわゆるプリンツェンリニエ（Prinzenlinie）というブランドの一部でした。これらのフェリーの導入は当初成功を収め、特にイギリス軍関係者やドイツ人の行楽客が短期間の旅行や車の輸送にフェリーを利用した。
当初の成功にもかかわらず、乗客数は1980年代に減少した。格安航空会社の登場とユーロトンネルの拡大により、フェリーの魅力はますます低下した。さらに、船内免税が廃止されたことで、フェリーの採算性が低下した。DFDSは1990年代、ハンブルク-ハーウィッチ航路にスカンジナビア公爵夫人号などの追加フェリーを投入したものの、フェリー事業の衰退を食い止めることはできなかった。
時代の終わり：フェリー事業の廃止
ドイツとイギリスを結ぶフェリーを維持しようとした最後の試みは2002年に行われ、航路がハンブルクからクックスハーフェンに移された。この措置は、エルベ川の所要時間を短縮し、航路をより経済的なものにすることを意図したものだった。しかし、この措置でもフェリー航路を救うことはできなかった。2005年11月6日、スカンジナビア公爵夫人はクックスハーフェンを最後に出港し、ドイツと英国を直接結ぶ旅客フェリーの時代は幕を閉じた。
同航路の廃止は多くの要因の結果であった。格安航空会社との競争の激化、ユーロトンネルの開通、免税品販売の損失、旅客数の減少により、運航は不経済となった。さらに、ベルギーやオランダからの他のフェリー航路が好まれるようになり、イギリスまでの所要時間が短縮された。
過ぎ去った時代の
ノスタルジックな
思い出
ドイツとイギリスを結ぶフェリーの歴史は、変化の歴史でもある。革新的な旅行方法として始まったフェリーは、両国を結ぶ重要なリンクへと発展した。しかし、交通インフラの変化と航空路線の台頭により、フェリーの重要性は薄れていった。
現在、ドイツとイングランドを結ぶ直通旅客フェリーはなくなっている。この航路を維持しようとした最後の試みは2005年に失敗に終わり、経済状況の変化から見ても、再開の見通しは立っていない。とはいえ、北海を横断することがまだ冒険であった過ぎ去りし時代の象徴として、フェリーの記憶は生き続けている。